子どもが計算で困るのは、抽象的な数字だけを見ているから。
ブルーナーの理論を知れば、なぜ算数教育で「ブロックを積む」から始めるのか理解でき、より効果的な指導設計ができます。
ブルーナーのEIS理論とは
ブルーナーは、人間の認識発達を表現様式の3段階で説明しました。
これがEIS理論です。
E(Enactive:動作的表現)、I(Iconic:映像的表現)、S(Symbolic:象徴的表現)の順で、段階的に抽象度を高めていくことが学習の効果を高めるという考え方です。
特に数学や科学教育では、この理論が指導順序の基本原則となっています。
子どもたちは具体的な体験から始まり、やがて図や絵を通じて、最終的に記号や式へと進むのです。
E(動作的表現):具体物との関わり
E(Enactive)は、手を動かして直接操作する段階です。
小学1年生が「5個のおはじきを3個移動させるとどうなるか」を実際にやってみるのが典型例。
ここでは体験と感覚が学習の中心になります。
ブロック、おはじき、数え棒、タイルなど、具体物の操作を通じて、子どもは「足す」「引く」の意味を身体で理解します。
この段階を飛ばして記号だけ教えると、子どもは「なぜそうなるのか」が分からず、計算は単なる暗記になってしまいます。

I(映像的表現):図や絵での表現
I(Iconic)は、具体物を図や絵で表現する段階です。
おはじきを実際に動かす代わりに、「○を描いて、3個消す」という方法に移行します。
ここで子どもの頭の中で抽象化が始まるのです。
数直線、面積図、テープ図なども映像的表現に含まれます。
例えば「12÷3」を学ぶとき、最初は12個のブロックを3グループに分けさせ、次に「□を12個描いて3つの枠に分ける」という図を使わせます。
この中間段階があることで、具体から抽象への橋渡しがスムーズになります。
S(象徴的表現):記号や式での表現
S(Symbolic)は、数字や記号だけで表現する最も抽象的な段階です。
「12÷3=4」という式が、ここに該当します。
ただし重要なのは、この段階に至るまでに十分なE・Iの経験が必要ということです。
子どもが「÷」という記号を見たとき、その背景に「ブロックを分ける体験」や「図を描いた経験」があれば、式は意味のある学習になります。
逆に、E段階を省略してS段階から始めると、子どもは機械的な計算に陥り、応用問題に対応できなくなります。
授業設計への応用:段階を踏まえた指導
EIS理論を授業に活かすには、必ず3段階の順序を守ることが鍵です。
例えば「分数の足し算」を教えるなら、まずチョコレートを実際に分割させ(E)、次に図を描かせ(I)、最後に式を書かせる(S)という流れです。
1時間で全段階を終わらせる必要はありません。
むしろ複数時間かけて、各段階を丁寧に経験させることが、深い理解と転移可能な知識につながります。
教材研究の際は「この単元では、どの具体物を使うか」「どんな図を描かせるか」を意識的に計画することが、子どもの学習効果を大きく左右します。
💼 現場還元
学級で「なぜこの子は計算ができないのか」と悩むとき、実は段階を飛ばしている可能性が高いです。
授業の中で『具体物の操作→図→式』という流れを意識的に組み込むだけで、子どもの理解度は劇的に変わります。
特に算数が苦手な子ほど、E段階に時間をかけることが重要です。
教員研修でもこの理論を共有すれば、全教科の指導改善につながります。
🎯 実戦クイズ
Q1. ブルーナーのEIS理論で『E』が表す、具体物を使った表現様式は?
正解: 動作的表現(Enactive)
解説: Eは「Enactive」の頭文字で、手を動かして直接操作する段階を指します。おはじきやブロックを実際に動かす学習がこれに該当します。
Q2. EIS理論で『映像的表現』に該当する、図や絵での表現段階のアルファベットは?
正解: I(Iconic)
解説: Iは「Iconic」の頭文字で、具体物を図や絵で表現する段階です。数直線や面積図、テープ図などが該当します。
Q3. ブルーナーは学習効果を高めるため、表現様式を『具体から抽象へ』段階的に進めることを提唱した心理学者ですが、その段階理論の英語名は?
正解: EIS理論(Enactive-Iconic-Symbolic)
解説: ブルーナーの表現様式の3段階は、頭文字をとってEIS理論と呼ばれます。段階を飛ばさず順序を守ることが、深い理解につながります。
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